「一回行っただけで好きになった!」
半年前に編集者の菊池さん(@kikuchi410)が花巻を猛プッシュしていたのを思い出し、八戸の妻の実家に帰る道中、岩手県の花巻市に1泊することにした。

ちなみに、自分は岩手に行った記憶がまるでない。幼少期に離婚した父の出生地が岩手の岩泉町あたりだったので、自分の血の半分は岩手に由来する。一度か二度、母に連れられて来ているはずだった。大人になり「いつか来なければ」と思ってはいたが、まさか、こんなにいいところだったとは。

花巻を目指すまで、石巻と花巻の違いも理解していなかった。花巻は岩手県の内陸部。石巻は宮城県の沿岸部だ。全然違う。東京から東北道をひたすら北上し、うっかり石巻方面に進まないように気をつけながら、ひたすら花巻を目指す。ちょこちょこ休憩をはさみ、約12時間かけて到着した。

前出の菊池さんに事前に紹介してもらっていた岩手県在住の柳田さん(@hiidee1990)に現地案内をお願いしていたが、待ち合わせまで時間があったので「茶寮かだん」に寄った。

茶寮 かだん

この建物は、「旧橋本家別邸」なのだそう。地元の名家だった橋本家三代目当主が、病弱な夫人のために3,4年もの歳月を費やして建てた、和洋折衷の立派な建物だ。作家・詩人の宮沢賢治が夫人のお見舞いに設計した花壇が今も現存している。その花壇を見られることから、「かだん」という店名になった。
店内に入ると、茶寮を経営している一ノ倉さん夫妻が出迎えてくれた。

遠方から来た旨を伝えると、店内を案内してくれた。どれも包み込まれるような、落ち着きのある装飾だ。

「これ、木が埋め込まれてるんです。」

直方体の木柱の表面模様が通常の切り口とは異なっているが、これは木をくり抜き、装飾として他の木材をはめ込んだものらしい。浅学非才な自分にはこれがどれほどの難易度なのかまるで分からないが、手間の混み様はわかるし、何より美しい。触るとつややか、まるで西洋菓子の模様。これがはめ込んだ木材だなんて想像もできない。真ん中が少しだけ、盛り上がっていた。それも作った大工の意匠なのだという。

一見普通の欄間も、黒柿が使われ、木目が雲を想起させるようにしつらえてある。ふすまの上、長押に見える黒筋も一本の木をくり抜いて作った粋な趣向だ。

本当はここに書ききれないくらい多くのことを一ノ倉さんからお聞きしたが、言葉のとおり「書ききれない」ので割愛したい。部屋の何もかもがその細部まで美しく、ただ気づかぬ人は気づかない、主張しない美しさだった。三代目当主の夫人に対するやさしさがそのまま形になったような内装は、そこに居る人の心までも清らかにしてしまう。

僕の勝手な想像だが、一ノ倉さんは普段、建物の説明をお客さんにそんなにしないのだと思う。本当は、自分で見つけるべきなのだ。夫人に対する優しさにあふれたこの建物に何度も通い、もしや…と自分でその良さに気づくことで、建物がその良さを開示してくれる、という逆説的な構造によって発見されるべき仕掛けにあふれている。成長度合いに応じ知らなかった機能をメンターの手引きによって開示される学校のように。

一ノ倉さんとの会話でひとつ記憶に残っていることがある。
「この建物で茶寮を始める前、汚れた床や壁を拭いてきれいにするのが大好きで大好きで」

長年使われなかったこの建物は、一ノ倉さんの手に渡った。

渡るべくして渡った。

一ノ倉さんは建物を愛し、建物は一ノ倉さんを愛していた。相思相愛。

僕がベーコンサンドとネルドリップ抽出のアイス珈琲をいただいた洋間には、一ノ倉さんお気に入りのアンプとスピーカーが設置され、Blue Note Jazzが流れていた。何から何まで美しい、そんな空間だった。

マルカンビル大食堂

お昼に行ったんだけど、外観写真を撮り忘れたので夜の写真でご勘弁くださいまし。「茶寮かだん」からは、車で5分、10分程の位置にマルカンはある。

そもそもマルカンビル大食堂ってなんぞや、っていう皆さんのために簡単にご紹介。

花巻のアーケード街に「マルカン百貨店」っていう8階建ての百貨店があったのだけど、経営難で2016年に閉店。地元からは街のシンボルだったマルカン大食堂だけでも残したい、という声があがり、大食堂の移転存続を求める署名活動が展開された。『リノベーションまちづくり』という取り組みをしている株式会社花巻家守舎さんが経営に名乗りを上げ、ついに2017年2月20日、1階と6階(大食堂)が復活することになった。

まきまき花巻さんの記事に詳しいので読んでみてね。
「新生・マルカンビル大食堂の再出発!待ち望んだ再オープン日レポート【前編】

地元ではちょっとした奇跡話として、皆知っているらしい。そんな大食堂に行ってみたいなーと思っていたので、来ちゃいました。

お昼になり初対面の柳田さん(@hiidee1990)さんと合流。年齢が僕と近いのもあるけど、めっちゃいい人で会って3分で好きになった。花巻市地域おこし協力隊の岡田さんもいたので(初対面だけど)一緒にパチリ。年末なのに仕事しててすごい。

ついでに知らないおじさん(花巻市の食品加工メーカー・FLIP FOODさん)2人組もイケメンだったのでパチリ。笑顔が素敵な人たちでした。(雑)

さてさてエレベーターで6階の大食堂へ。2〜5階がなにもない。ちょっと新鮮。

エレベーターの扉が開くと、眼の前には食堂が広がっていた。噂には聞いていたけど、かなりの賑わいだ。ほぼ全席が埋まり、メイド制服の店員さんが忙しそうに走り回っていた。

サンプルケースには100種類以上のメニューが並んでいる。
何を食べればいいんだ…。

柳田さんの「ナポリカツが有名みたいですよ。」のススメもあり、素直にナポリカツを注文。780円ってかなりリーズナブルじゃない??


う、うつくしい…。サラダがそれなににボリューミーなのでナポリタンとカツが小さく見えてるけど、そんなことないからね。それぞれが、それなりに大きいのよ。。

そして味!ナポリタンはもっちもちの食感。美味しい…。


そしてマルカンビル大食堂 の代名詞と言えばこれ。ソフトクリーム。

これだけでお昼ごはんですよね?っていう分量。。180円ですよ皆様。180円…

甘さ控えめだからか、最後まで美味しく食べることができる。


窓からは花巻市内が一望できた。

ソフトクリームを食べながら柳田さんと小一時間話し込み、今後どうやって生きていけばいいかなんて辛気臭い話までしてしまった気がする。いろんな人が、いろんなことを思いながら、話しながら、過ごしていったこの場所で、自分もこうして話をしている。

僕みたいな地元じゃない人も混じっているにしても、、ひっきりなしにお客さんが入れ替わる店内。ここまで愛されてる食堂ってすごくないか?って思ってしまった。月並みな感想。

「マルカンビル焼きいもりょうちゃん」にも行くべし。

マルカンビルの1階外に焼き芋屋がある。「りょうちゃん」というお店だ。大学院生で焼きいもクイエイターの榊原 亮さん(@ i_am_yakiimer)が店長。ここは昔あった焼き芋屋さんを、2018年3月に榊原さんが復活させた。

岩手日日新聞社の記事に詳しいから読んでみてね。
「マルカン裏 “あの味”復活 榊原さんが焼き芋店開業【花巻】」

ここで買う焼きいもがめちゃくちゃ甘くてしっとりでほくほくで美味しいんだけど(美味しそうな画像がなくてごめんねすぐ食べちゃった)、それよりも亮ちゃんの人柄が面白いのでとりあえず会いに行ったほうがいいです。面白い人。

ちなみに僕みたいに「りょう」って名前だと50円引きなので、Lサイズの焼きいもがMサイズの料金で食べられます。全国の「りょう」くん「りょう」さん「りょう」ちゃんは倒産させるつもりで食べに行きましょう。

ゲストハウス「meinn」

案内人の柳田さんとも別れ、柳田さんのオススメでゲストハウス「meinn」に泊まることに。マルカン大食堂からも徒歩5分程度の場所にあります。

ここは花巻の地域おこし協力隊だった福田さんが作ったゲストハウス。花巻の玄関になりたい、という思いを込めて作られたのだそう。

くわしくはこちら。
「花巻を存続可能なまちに。まちを楽しむゲストハウスをつくる!」

シャワールームがあったけどタオルが有料だったのと、せっかくなら銭湯にでも行こうかと店長のブラッドリーに聞いてみたら、「大沢温泉いいよ!一番のお気に入り」と教えてくれたので早速クルマで行くことに。

雪道を30分程。路面は完全にアイスバーン状態で、発進時にはタイヤが空転する始末。実は雪道走行に慣れていなくて、ブラッドリーに「なぜ遠方の温泉勧めたし」と心の中で悪態をつきながらも、なんとか無事到着。

meinnnに泊まったら大沢温泉に行っちゃおう

花巻駅から大沢温泉へは15時のバスがあり、17時には迎えのバスがあるので、バス移動もありかもしれない。往復1200円かかってしまうので、車があれば便利だ。(残念ながらタイムズカーシェアはないらしい)

花巻温泉郷のなかのひとつ、大沢温泉。格式ある入口だと思ったら、なんと築200年の建物だそうな。建物の中にはいくつか温泉が点在していて、好きなところに入ることができる。露天風呂もあるし、半露天もある。泉質はアルカリ性単純泉。入るとからだが芯からぽかぽかする。

大沢温泉自体にも泊まれるので、また花巻来た時は温泉に泊まるのもアリかもしれない。湯治場感があってちょっとしたレトロ感にも浸れる絶妙スポット。

結論、行ってよかった。ブラッドリーありがとう。

ゲストハウスは出会いがいっぱい

ゲストハウスに戻るとブラッドリーがなにやらせわしなく動いている。「いい温泉だったよ!」と伝えると「いいところだったでしょ!」と。いいところだったよ…てか花巻みんないいところだよ…
部屋に戻ろうと思ったら「カウンターで一杯どうですか?」と片言の日本語で誘われ、そのままカウンターへ。

先客が何名か。地元の「27歳」の人達が何人か集まっていた。年末、花巻に帰省してきて、たまたま町で鉢合わせたんだそうだ。

「ねえ、お兄さん何歳?」
「29だよ」

「あっ…すみません、てっきり年下かと。タメ語で…」

悪かったな。ほとんど変わんねぇよ。
ちなみに一番タメ語で話しかけてくるのは24歳のブラッドリーである。

みんないいヤツだった。道を訪ねてきたカップルを案内していたら楽しくなって一緒に写真を撮った話で盛り上がっていた。これからみんなでカラオケに行くと言い、去っていった。
地元があるって、いい。東京出身者からすると、なんだか羨ましい光景だ。

翌日。

朝食を食べに1階に降りると、そこにはブラッドリーとは違う小柄な女性が一人。
花巻の地域おこし協力隊の塩野さんだ。住み込みで働くブラッドリーが休んでいる時間帯、ここでバイトをしているらしい。まだ花巻に来て数ヶ月というが、すっかり地元の人感が漂う、素敵な女性だった。

そしてカウンターには知らないダンディーなおじさんが座っていた。宿泊者ではないらしい。
「マルカン、行ったんだ」


話しかけてきたのは、北山 公路さん。「マルカン大食堂の奇跡 岩手・花巻発! 昭和なデパート大食堂復活までの市民とファンの1年間」の著者で、「Machicoco/マチココ」花巻まち散歩マガジンの創刊者だ。

ゲストハウスのカウンターでばったり、そんな出会いがあるのか?なんて思いながら、そんな出会いもいいかもしれない、って思った。花巻への愛を、これでもかというくらい僕に聞かせてくれた。

「この町は資源に溢れすぎて、当たり前になっちゃって。良いところに気づけていない」

宮沢賢治誕生の地であり、わんこそば発祥の地であり、雄大な自然があり、たくさんの温泉があり、皆んなに愛される商店街とマルカンがある。それに祭りが盛んだそうで、花巻の経済は祭りで成り立っていると言っても過言ではない、と北山さんは言っていた。

こんなこと言われたんじゃまた祭りの時期に来るしかないじゃないか。。

一回来ただけで。

塩野さんと北山さんに別れを告げ、僕は実家のある八戸に向けて走り始めた。

確かに、一回来ただけで好きになってしまった。

偶然か。それとも必然か。

たまたまにしては出来すぎていたように思うけど、僕は素敵な人達にたくさん出会うことができた。当初予定していた人達の倍以上。お会いする人たち皆が素敵に見えたのはなぜだ??

花巻滞在が一回性の旅として終わるのか、それとも自分にとって何か「関わり合い」のある町となってこれからも関係していくのか。その差はわずかしかないように思えた。僕がこの町と、ここに暮らす人を好きになれるかどうか、それだけだ。

また会いに行きたい。そこに行けば会える人がいる、って、凄いことだ。

行ったら、「すてきな人」たちに沢山会えるかも。

自分の住む町も、そんなふうに思ってもらえる町にしていきたい、と素直に思った。

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事